2026-06-11 ・ 経営
アンケートで満足度4.5でも、翌月に参加者が減る理由
料理人の中には、客が食べ終わった後の皿を見に行く人がいる。
「美味しかった」と言いながら、野菜だけ残している。スープを半分しか飲んでいない。パンをほとんど手に付けていない。口で言っていることと、皿の上に残ったものが一致しない。
何が「美味しくなかった」かを教えてくれるのは、発言ではなく残飯だ。
フィードバックの本質は、言葉ではなく行動にある。
「楽しかった」と言って、翌週来なかった
アンケートを取っている店では、よくこういうことが起きる。
大会終了後のアンケートで、「また参加したい」が90%。満足度が5点満点で4.5。数字を見ると大成功に見える。
でも翌月の参加者数を見ると、前月より2割減っている。
「楽しかった」という言葉と、「また来る」という行動は別物だ。口で言った「また来たい」は、その瞬間の気持ちに過ぎない。翌週何かがあれば、自然と来なくなる。
アンケートは「大会直後のポジティブな感情」を測定している。本当に測るべきなのは「翌月も来るかどうか」だ。
行動データが教えてくれること
「満足している客が来なくなる」現象には、いくつかの構造的な原因がある。
「また来たい」は条件付きの意思だ
「次に良い日程があれば来る」「もし友人を誘えたら来る」——これは「また来たい」という発言の裏にある実態だ。無条件の意思ではなく、いくつかの条件が揃ったときだけ実現する意図だ。
アンケートにはこの「条件」が表れない。行動(実際に来たかどうか)には条件の結果が出る。
「楽しかった」には閾値がある
5点満点で4.5と4.8の差が、行動に影響するかどうかは測定できない。「また来るかどうか」の閾値がどこにあるかは人によって違う。4.5が「次も絶対来る」なのか「まあ良かったけど」なのかは、アンケートの数字だけではわからない。
わかるのは、来たかどうかだ。
不満は言葉にならない
大会で何か不満を感じても、多くのプレイヤーは言わない。スタッフに直接言うのは摩擦があるし、アンケートに書くのも面倒だ。ただ、次は来ない。
「不満がなかった」は「不満を言わなかった」と同じではない。
翌月の参加者数が最も正確な評価
複数の指標を追うより、シンプルに1つだけ追う方が良いことがある。
トーナメントの場合、「同じプレイヤーが翌月も参加したかどうか」が最もシンプルで正確な指標だ。
リピーター率が上がっているなら、大会の質が上がっている。下がっているなら、何かが機能していない。この変化と大会の設計変更を重ねると、「何を変えたらリピーターが増えたか」が見えてくる。
参加者のリスト管理についてはエントリー管理とチェックインの設計で書いた通り、誰が来て誰が来なくなったかを記録する仕組みが前提になる。記録がなければ比較できない。
「皿を見に行く」とは何か
フィードバックを行動で読むとは、具体的にどういうことか。
大会終了後に帰る前のプレイヤーの表情を見る
満足している客は少し名残惜しそうに帰る。不満がある客は足早に帰ることが多い。表情も、言葉なしのフィードバックだ。
次の大会の申し込み速度を見る
大会の告知を出してから、何日で定員に達するか。前回より速ければ需要が上がっている。遅ければ何かが変わっている。
キャンセル率と理由を見る
「申し込んだのにキャンセルした人」の比率が高い場合、申し込み時点と実際の参加意欲に乖離がある。理由を確認できる場合はする、できなくても数字として把握する。
常連の参加頻度を見る
月2〜3回来ていた人が月1回になったとき、何かが変わっている。それが外部要因(忙しくなった等)か内部要因(大会への飽きや不満)かは断言できないが、注目すべきシグナルだ。
言葉と行動のギャップを価値にする
最も厄介なのは、「楽しかった、また来たい」と言う人が実は来なくなっていて、何が問題かわからない状態だ。
アンケートだけを見ていると、この状態に気づかない。4.5点で「問題なし」と判断し続ける。
翌月の数字を追う習慣を持つと、「何かが変わった」をいち早く検知できる。原因を特定できなくても「変化に気づく」だけで対処が早くなる。
料理人が残飯を見に行くのは、美味しかったかどうかを疑っているのではない。より正確な情報を集めるためだ。
「楽しかった」という言葉を信じながら、翌月も来てくれるかどうかを行動で確認する。この両方を見てはじめて、大会の質が測れる。
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