2026-09-19 ・ トーナメント運営
大会カレンダーは、埋めるほど客が減る
映画館は、席が埋まらないからといって上映回数を増やしたりしない。増やせば1回あたりの客が薄くなり、どの回もガラガラになる。回数を減らして客を寄せたほうが、館内は満席に見える。
トーナメントの開催カレンダーも、同じ引力の下にある。参加者を増やしたくて開催日を増やす。でも来る客が同じ顔ぶれなら、増えるのは開催数だけで、1回あたりの参加者は減る。
秋から年末にかけて大会を仕込む時期に、この判断を間違えると、忙しいのに卓が薄いという最悪の状態ができあがる。
「枠を増やす=参加者が増える」ではない
大会を増やす発想は、たいてい「機会を増やせば来やすくなる」から来る。平日にも開催すれば、週末に来られない人が来る。理屈は通っている。
問題は、実際に増えるのが「新しい客」なのか「既存客の来店回数」なのかだ。
新しい層が入ってくるなら、開催を増やす意味がある。でも実際は、既存の常連が分散するだけのことが多い。今まで週末に20人来ていたのが、週末12人・平日8人になる。総数は変わらず、1回あたりの卓は薄くなる。
薄い卓は、そのまま体験の質に効く。テーブル稼働率を上げすぎると、売上が下がるの裏返しで、逆に薄すぎる卓も売上を落とす。人が少ないとゲームが間延びし、盛り上がらず、次に来る理由が減っていく。
開催を増やして参加者が減るのは、この経路で起きる。
増やすなら、客層が違う枠を作る
分散させずに開催を増やすには、既存客と重ならない枠を作るしかない。
たとえば、時間帯をずらす。平日の早い時間は、仕事帰りの層が来られるが、深夜まで遊ぶ常連とは別の人たちだ。曜日を分けるだけでは同じ客が分散するが、時間帯を分けると客層が変わることがある。
たとえば、対象を分ける。初心者の「入りやすさ」は内装では決まらないで書いた「初心者専用の入口」は、常連の大会とは別の客層を呼ぶ枠になる。ここは分散ではなく、追加になる。
たとえば、規模を変える。少人数で短時間の回と、腰を据えて戦う長い回では、来る人が違う。同じ人が両方に来ることもあるが、「今日は時間がないから短いほうに」という選び方が生まれると、来店回数自体が増える。
増やしていい枠とは、既存の枠から客を奪わない枠のことだ。ここを確かめずに日程だけ足すと、必ず薄くなる。
年末に向けて「山」を作る
秋から年末は、イベントを組みやすい時期だ。忘年会シーズンに合わせた大会、年間の締めくくり、年またぎの企画。組みたくなる材料が多い。
でも、材料が多いからと全部開催すると、山がなくなる。毎週何かやっている店は、「今週だけの特別」を作れない。
集客イベントは「打ち方」より「波の作り方」で書いた通り、イベントは単発の打ち上げではなく、波として設計したときに効く。年末に向けて山を作るなら、通常営業の平地があって初めて、その山が高く見える。
具体的には、年末の大きな回を一つ決めて、そこに向かって助走を作る形になる。10月・11月に予選的な位置づけの回を置き、12月に本戦を置く。この設計だと、途中の回に出る理由が「年末に向けて」になり、単発の大会より参加する動機が強くなる。
常連が積み上げたポイントが、常連を追い出す日で書いた通り、こうした積み上げ型の設計には落とし穴もある。長く通っている人だけが有利になると、途中から入った人が「もう間に合わない」と感じて離れる。助走を作るなら、途中参加でも本戦に届く道を残しておく。
減らした枠は、通常営業に戻す
回数を減らすと、その日の売上がまるごと消えるように感じる。でも、大会をやらない日が「店を閉める日」になるとは限らない。
大会がない日は、通常営業の日として使える。トーナメント以外で遊びに来る層は、大会日より落ち着いた雰囲気を求めていることもある。大会の熱気が好きな人と、静かに遊びたい人は、必ずしも同じではない。
売上は参加費ではなく、滞在時間が作るで書いた通り、売上は参加費だけで決まらない。大会がなくても、長く滞在してもらえる日は作れる。
大会日を減らすことと、営業日を減らすことは別の話だ。ここを混同すると、「減らしたら売上が落ちる」という結論に飛びついて、薄い大会を開き続けることになる。
埋まる密度から逆算する
カレンダーを組む順番を変えると、判断が楽になる。「何回開催するか」から始めるのではなく、「1回あたり何人集めたいか」から始める。
たとえば、卓が心地よく回るのが1回あたり3卓——おおよそ20〜25人だとする。過去の来店から、月に集められる延べ人数がだいたい見えているなら、その総数を1回あたりの目標で割れば、開催できる回数が出る。
この計算をすると、たいてい「今組もうとしている回数は多すぎる」という結論になる。減らすのは気が進まないが、薄い回を4つ開くより、埋まる回を2つ開くほうが、体験も売上も上がる。
記録していないデータに、離脱の原因が隠れているで書いたように、この逆算は来店の記録がないとできない。感覚で「だいたいこのくらい来る」と見積もると、たいてい多めに出る。
大会カレンダーは、埋めるものではなく、密度を保つために間引くものだ。増やす枠は客層が重ならないものに限り、年末に向けては山と平地を作り、回数は1回あたりの目標人数から逆算する。空いている日を埋めたくなる気持ちを抑えられれば、秋の仕込みはそれだけで形になる。
客層が重ならない枠をどこに作るかについては、一人で来た初心者は、金曜に来ないで別の角度から書いた。集客したい日といちばん賑わう日は、必ずしも同じではない。
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